少し遅くなりましたがWiiについて思うところを。
先日Wii Previewが開催され、Wiiの発売日や価格などが発表されました。しかし今回の発表の目玉は発売日でも無く価格でも無く、ましてやソフトラインナップでもなく、WiiのコセンプトやWiiチャンネルにあったのではないかと思います。今回の発表は私には 『Wiiはゲーム機とテレビとPCとインターネットとWEBとを全部ひとまとめにして使いやすくしてみなさんにお届けします』と言っているように聞こえました。それを支えるのがWiiチャンネルです。 Wiiはテレビを非常に強く意識したハードです。コントローラは「Wiiリモコン」、そしてソフトウェアコンテンツひとつひとつを「チャンネル」と呼びます。この名前付けからしてテレビそのものです。Wiiがテレビを意識する理由はひとつ。テレビほどリビングの真ん中で誰からも嫌われずに居座っている存在は他に無いからです。Wiiが目指す「誰にも嫌われないハード」になるにはテレビが一番良いお手本だったのでしょう。 さらにWiiはPC-インターネット-WEBというパソコンの世界で発達してきたこのスクラムに割って入ろうとしています。PCの弱点である「起動に時間がかかること」「操作が難しいこと」「価格が(Wiiに比べれば)かなり高いこと」を突き、またインターネットやWEBという面白いけれども良く知らない者が飛び込むと火傷する世界の安全な部分だけを抽出して提供することで、あまりネットの世界に詳しく無い人たちを取り込もうとしています。言うなれば、 『一人旅の海外旅行しか無かったところに旅行会社がガイド付きで案内する格安ツアーを用意した』といった感じでしょうか。海外旅行の醍醐味は一人旅にあるとは思いますが、誰でも最初から一人旅に出れる訳ではありませんし、外国語が苦手な人やお手軽にショッピングや観光を楽しみたい人達にとってはツアー旅行の方が便利でしょう。そしてそういったツアー旅行を求める人の方が潜在的な数は圧倒的に多いのです。Wiiはその人達の受け皿になり得る可能性があるのです。 こうやって書いていくと任天堂の行く先にはバラ色の未来が待っているようにも見えますが、実際のところ任天堂はそんな楽観的には考えていないようです。逆にNintendoDSで拡大したゲーム人口がまた減ってしまうのではないか、ユーザがすぐに飽きてしまうのではないかといった不安や恐怖と戦っているように思えます。 これはゲームというものが持つやや特殊な事情が影響しています。多くの人にとってゲームはあくまで娯楽という位置付けであり、必要不可欠なものではありません。人生を豊かにするとか人生の糧になるとかいう考え方もありません。面白いから暇つぶしにやってみる、といったスタンスのため、脳トレやおい森でせっかく掴んだユーザも、続いて新しい魅力あるソフトが出ないとすぐにユーザは去ってしまいます。 今まではハードの性能が上がることでソフトの質(特に映像面)が上がり、ユーザが新しいソフトを買うという循環でしたが、任天堂は自らその循環を携帯機に続いて据え置き機でも断ち切ってしまいました(いや、実はNintndoDSは任天堂の携帯ゲーム機で初めて3Dグラフィックスを採用しているしWiiもGCの2倍と言われる描画性能のアップはしているんですがね)。NintendoDSは幸い優秀なソフトウェアが発売されて爆発的に普及しましたが、だからと言ってこの状況が永遠に続くとは限りません。新たに魅力あるソフトが発売されなければ、人はすぐにDSを押入れの中にしまって二度とソフトを買ってくれなくなるでしょう。現状成功しているので忘れがちですが、未だNintendoDSは『未来の成功を保証されたハードでは無い』のです。任天堂自身このことを良く分かっているが故に、楽観的な雰囲気が出てこないのでしょう。 WiiもDSと同じです。映像表現で他社を圧倒出来ないハードであるが故、それ以外の部分で差別化してユーザに受け入れられていく必要があります。さらにそれは最もゲームの世界に引き止めるのが困難な「ゲームをしない人達」をターゲットにしています。不安や恐怖を原動力にしてイバラの道を突き進む任天堂は、果たしてイバラの先にバラ色の未来を見つけることが出来るでしょうか?
by nintendods
| 2006-09-18 19:53
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