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どれだけ深く考えるか

有名どころに初トラバするのは勇気が要る。結構悩んだけどムチャクチャいい事言っていると思ったのでかさぶたさんとこの記事をトラバしてみる。

わたくしがビビっと来たのはこの部分。
しかし3つも武器があれば、思考は1/3に分散する。もしたった1つの武器に限定していれば、思考は3倍に集中される。世の中ではよく「自由な発想」という馬鹿馬鹿しい絵空事がささやかれているが、そんなもの、ただ発散して終わるだけだ。思考は集中してこそ、強い力を発揮する。
まさにその通り。自由な発想というのはあくまで「専門分野から離れているところの知識を使ってもいいけど・・・」という意味であって、思考の発散であっては意味が無い。思考は集中しないと良い物は生まれない。

任天堂が成功したのはまさにこの部分だと思います。確かにDSもWiiも最先端の技術というのは(少なくとも表面的に見えている範囲では)あまり使っていない。グラフィックス性能も他社に比べて劣っているし、DSのタッチパネルにしてもWiiのリモコンにしても別に最新技術というワケでも無く世の中にはこれまでも存在していたものです。それにも関わらず世の中に受け入れられる製品になったのは何故か? それは任天堂が基本的にゲーム機でしか売上を出せるものが無く、逃げ場が無かったことが大いに影響しているように思えます。

ちょっと昔話をしましょう。私の知る限り、2003年から2004年の任天堂は、それはもう必死でした。ゲームキューブはPS2はおろか(世界的に見ると)XBOXにも負けて据え置きゲーム機市場はN64に続いて惨敗状態でした。この頃の任天堂はGBAでなんとか食い繋いでいたと言っても過言では無いでしょう。その時です。2003年のE3でSCEがPSPを発表したのは。確かこの時任天堂の株価は1万円を切るぐらいにまで落ちたように記憶しています。市場も分かっていました。据え置きに続いて携帯機もSCEの天下になる。そうすると任天堂にはもう何も残らないと。
任天堂は必死で考えたハズです。それはもう社員が一丸となって深く考えた。携帯機でSCEに勝つにはどうすれば良いか? PSPに負けないグラフィックス能力を持ったマシンを開発するのか、それとも別の道を歩むのか。。。結果として任天堂は、グラフィックス性能がハードの優劣を決めるというそれまでの常識を捨てて、新しい遊びという方向に舵を切りました。以前にも当ブログで「イバラの道を突き進む任天堂」と書きましたが(ここの最後の方)、グラフィックス性能を競っていた方が企業としては簡単です。これまでの延長線上で物事を考えることが出来るからです。DSでタッチパネル・2画面を採用し、Wiiでリモコンを採用した結果、確かにゲーム人口の裾野は広がりましたが、それを維持していくのには多大な努力が必要です。センター試験は高校3年の最後の冬に一回あるだけだから集中して勉強も出来ますが、あの試験が3ヶ月に一回あって、一度でも点数が低かったら大学には行けないという制度だったらどうですか? 泣きそうですよね? 任天堂は自らそういう場所に身を置いて逃げ場の状態で戦っているのではないかと思います。だからこそ、色々なアイディアが出てくる。ヒット作が出てくる。本当に集中して深く考えている結果が今の任天堂を支えているのだと思います。

私は人間というのはほんの一握りの人間を除くと大して能力は変わらないと思ってます。実際私がこれまで会った人の中でも本当に輝いていて、この人だけはどんなに頑張っても超えることが出来ないと思った人は数人しか居ません。その道で世界一と言われる大企業の方とも仕事をする機会がこれまで何度かありましたが、個々の人間については我々と能力的に違うようには感じませんでした(会社としてのマネージメントは一流企業、特にアメリカや欧州の会社は相対的に優れているとは感じることはありますけどね)。
能力が同じなのに何故差が出るのかと言われれば、結局は目的に対してどれだけ深く考えてるかということの差ではないかと思います。(光子ロケットにでも乗らない限りは)時間は全ての人に対して平等に進んでいきます。同じ時間でどれだけ深く考えてより良い結果を出せるか、より良い決断を下せるか。その差が大きいのではないかと思います。
結局のところ、企業の栄枯盛衰なんていうのは各社員がどれだけ知恵を振り絞っているか、どれだけ知恵を振り絞れる環境を作れるか、そしてその知恵をどれだけ汲み上げて的確な決断が出来るか、で決まるんではないかと今の任天堂を見ていて思った次第。任天堂は自ら逃げ場の無いポジションに立つことで、荒療治的に企業体質を変えてしまったようです。さあ、今度はSCEの逃げ場が無くなってきました。果たしてSCEは復活してこれるでしょうか?
by nintendods | 2007-07-29 01:43 | OTHER
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