今年のE3の後でテクモの人がNDSとPSPに関するコメントをしている記事がありました。急にふと思い出したので探してみましたが、非常に的を得たコメントだと思うので紹介しておきます(元記事はここ)。
「DSはソフトを知っている人が開発したハードで、PSPはハードを知っている人が開発したハードだと思う」PSPはまさにハード指向のハードです。ソニーはDRAM混載90nmプロセスという世界でも最先端の半導体技術を持っておりPSPはその半導体技術を設計思想の中心にしています。現在の3Dグラフィックスというのは基本的には回路規模と性能が比例するという傾向にあります。つまり表示性能を上げるためにはLSIを大きくすればいいのですが、そうするとLSIコストが上がります。また表示性能を上げるということはメモリをより消費する(ポリゴンデータやテクスチャのデータが大量に要る)ことになりますので、こちらもコスト上昇要因になります。ですがソニーは最先端の半導体工場という武器を持っています。そこでソニーが取る戦略は明らかです。任天堂がマネのできない高性能のLSIを自社工場で作ってしまえ、ということです。DRAMという面積の小さいメモリをLSIに内蔵する技術と90nmという最先端(そろそろ最先端ではなくなりつつありますが)の微細化技術を駆使することで、回路規模・メモリ容量の大きい(従って性能の高い)LSIを比較的安価(といってもかなり高いはずだが)に製造することができたのです。自社半導体技術でできることは何か?という視点で作られたハード、これがPSPではないでしょうか。 それに対して任天堂は自社で半導体工場を持っていません。半導体はおろか他の部品もすべて外部から購入しています。内製化率50%というソニーと真っ向勝負して勝てるワケがないのです。ですが任天堂にはソフトがあります。当然任天堂の取るべき戦略はソフト開発を中心に据えたものとなるのです。また任天堂はゲーム業界に少なからず危機感を持っています。このままブレークスルーなく既存の枠組みのままでハードが進化していっても、その先にゲーム業界の未来は無いと考えています。そこで任天堂は考えました。どうすれば業界にブレークスルーを起こせるかを。その答えがNDSです。NDSは描画性能という面ではPSPに対してかなり抑えられています。これはソニーと真っ向勝負するのを避けるという意味と、コスト・消費電力といった携帯ゲーム機として非常に重要な「性能」を重視すべきだという意味があるのだと思います。また、これは伝え聞いた話ですが、任天堂はあえて「スポーツカー」を作らずに「軽自動車」とすることで誰でも操縦しやすいマシンを提供し、結果としてたくさんのソフトを供給してもらう狙いがあったようです(注:「スポーツカー」と「軽自動車」は私の勝手な例えです。また、あえて性能が大きく異なるものを例に出しましたが、これがPSPとNDSを表しているという意味ではありません)。そして最も重要なのが「タッチパネル」という新しいエッセンスです。性能を抑え、代わりに新しい機能を装備しました。これにより最近力勝負(どれだけ綺麗な絵を出せるか、どれだけ自然に近い動きになるか)になりがちだったゲームソフトの価値観をハード側で無理矢理アイディア勝負の世界に引き戻したのです。 PSPが低価格で年末商戦に合わせてきた以上、PS-SS戦争の時のようにどちらかが大きな血を流すことになるでしょう。ただあの時と違うのは、NDSとPSPが全く違う思想で作られたマシンであるということです。ですから真っ向勝負のようでありながら実際に殴り合ってるワケではないという妙な図式になっています。勝負のカギはやはりNDSのタッチパネルでしょう。NDSのブレークスルーが機能して面白いソフトがNDSに大量に出ればNDSが覇権を取り、機能せずに手詰まりになれば性能の高いPSPに軍配が上がるのではないでしょうか。設計思想の大きく異なるNDSとPSPの今後に目が離せません。 最近多くの人が見にきてくれてるようなのではりきって書いてしまいました。長文を最後まで読んでくれた方ありがとう。
by nintendods
| 2004-10-31 00:33
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